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〓 システムエンジニア労災死亡(精神障害)事件 会社の賠償責任を認定 〓
裁判所 東京地裁民事第13部
被災者 Eさん 男性(当時25歳)
原 告 Eさんの両親
原告ら代理人 弁護士 川人博、弁護士 須田洋平
被 告 IT通信会社
事件の概要 原告らの二男である被災者は,被告会社にシステムエンジニアとして勤務していたところ,平成18年7月の配置転換をきっかけに,さらなる長時間残業に従事することとなった。そのため,被災者は過重な業務に伴う業務上の過度のストレスを受け,精神障害を発症した。そして,その精神障害の結果,被災者はアルコールを過剰に摂取して,平成18年9月16日に死亡した。
本件は,被災者の両親である原告らが,被告に対し,被災者の死亡に伴う損害賠償を請求した事案である。
なお,本件に関する労災申請について,中央労働基準監督署は,平成19年10月10日,業務上の死亡であると認定している。
判示内容 【因果関係】
以下の点から心理的負荷の強度の評価を「強」と認定し,被災者の精神障害と業務との因果関係を認めた。
・厚労省の判断指針を準用。
・平成18年7月の配置転換を心理的負荷の強度Uと認定。
・配置転換後の仕事は以前の仕事と異なり業務内容の変化が大きいこと,業務量が過多になったことを,それぞれ心理的負荷の強度Vに修正。
・死亡前2か月間の時間外労働時間が1か月当たり100時間を超え,特に過重であると認定。
【安全配慮義務違反】
人事部長は長時間労働で過労死のリスクが高まることを知っており,かつ,上司も人事部長も被災者の長時間労働を認識していたことから,業務上の心理的負荷等の過度の蓄積により,被災者の心身の健康が損なわれることを予見できたにもかかわらず被災者に十分な支援をしていないとして,安全配慮義務違反があると認定した。
本判決の意義 本判決は,精神疾患を原因とする急性アルコール中毒死について初めて使用者(会社)の法的責任を認めたものであり,極めて重要な意義を有する。
また,システムエンジニアの多くが過労ストレスから精神疾患を発症する例が続いており,勤務条件の改善・健康管理の充実等を強化することが大切である。
今月が政府による自殺対策強化月間となっているが,本件のような事案は実質的に精神疾患による自殺と評価されるものであり,その意味でも本件のような被害を防止するために企業及び政府の責任は重大である。 |