東和システムは、課長代理のうち今回の原告 3人を除く50数名を課長としました。課長代理そのものの責任・権限の変更、または、明確化という手段を選ばなかった理由はよくわかりません。いずれにしても、会社から対象となる人それぞれに、管理監督者として仕事をする意志がある旨確認し、昇進させたとのことです。

従業員 400人強の会社で、 50の「課」を新設したわけではないでしょう。50の「課」を新設していたりしたとしたらそれはそれでたいへんなことで、事務方各部署はパニックに陥っただろうと思うのですが、それはないですよね。想定しないことにします。

東和システムの場合「課長」というのはいずれかの「課」の「長」、英語の Section Manager なのではなく、単に格をあらわすだけのもののようです。それにしても、名刺に刷って、取引先にも見せることになる役職名をこんなに多数いっぺんに変えられるというのは驚きです。

会社としては以前から、課長代理は管理監督者だという認識だったわけで、 50数人の実質的な職務が変わったわけではないだろうと思います。一般的に「よりいっそう職務に励め」ということはあるかもしれないですけど。チームの構成についても、たとえば小林さんのプロジェクトではリーダーではない課長さんがいらっしゃったわけで、この 50数人のみなさんが課長になっても、チーム内の役割はメンバーだったりリーダーだったり、いろいろであることにはかわりないでしょう。

職位の責任・権限は明文化してほしい

以下は自分の意見です。

私の話になりますが、数年前に所属していたある会社は、そのとき株式公開準備中で、社内のいろいろな規定・手順の整備に取り組んでいました。東和システムよりは小さな会社ですが、職位については比較的厳格な会社で、プロジェクトの計画・予算とそれらの執行と評価、採用昇進の人事の責任権限などは、もともと職位に対応してある程度決まっていました。それでもまだ不十分だということで、株式公開への準備で改善と精緻化を図りました。そのとき、内部監査の担当者が、会議のたびに私たち現場の管理職に明確な答えを求めたのは「プロジェクトのマネジメントは誰が責任を持つのか」でした。

ある日、その会社のある開発の部署の管理職達が、自分たちの意見をまとめて、「私達は、プロジェクトを担当する管理職となる。各プロジェクトにはリーダーがいる」と自分たちの職位の権限・義務を定義しました。この会社の場合、プロジェクトのリーダーは通常管理職ではない人が担当します。それを聞いて憤慨した内部監査の担当者さんが、品質保証の部署にいた私のところに来て、「誰がプロジェクトをマネジメントするのですか?」と言われていました。つまり、人・ものなどのリソースの管理、コストにかかわる事項の顧客との折衝、利益の確保などのプロジェクト管理について、遂行責任はリーダーが負うのだろうけど説明責任 ( Accountability ) を負う人はいないのか? ということです。

内部監査担当者さんが求めていた説明責任 ( Accountability ) とは、ただ報告するだけの責任ではなく、「その結果についてどう説明するのか?」という説明を求められる立場として責任を持つということです。その責任を負う人がいなくて困るのは、会社だけではありません。とにかくお客様のいうとおりにやるしかない羽目に陥るリーダー以下のメンバー全員も困ります。また、混乱の結果としてシステム開発の納期や品質に響くことがあればお客様も困ります。

ちなみに、その会社では、「部下に対して権限の委譲はできるが、責任は委譲できない」というようなことも文書で定めていました。だから、「現場のことはよく知らないプロジェクト責任者」みたいな役割はあり得ませんでした。

でも、そう考えていくと、結局、 2次請け、 3次請けの仕事をする会社がそんなきちんとした体制を持ってるわけないなぁ、ということになってしまいます。 1次請けの会社も、法的には指揮命令できないはずの 2次請けのメンバーと法律どおりの関係で仕事をして、しかも、それを客先常駐で、となると、限りなく不可能に近い職務です。

モラル・ハザード

そんな無理している会社の多くが寄り添うようにして日本情報技術取引所 ( JIET ) のような組織を作ったりするわけです。正会員や正会員の外注の中には私が直接間接に知っている会社がありますが、そのうちいくつかはまちがいなくやってますね、自分より小さな会社から外注をかき集め、右から左に業界大手の客先に連れて行って仕事をさせるブローカーまがいのことを。私自身も転職先を間違えてそのような会社に勤めたことがあります。そこでの数ヶ月で見たものは次の通り。

  • 客からは残業・休日出勤の対価をもらって外注には払わない営業
  • 出張旅費を出してくれないお客さん(で、この会社も外注には出さない。社長は「困った困った」などと言ってはみせるけどとにかく出さない)
  • なぜかきっちり月末に失踪する外注さん
  • 各人員の経験・能力など関係なくとにかく一律? 平均? 一人月50万円にしろと要求する大手システムインテグレータ

そのときのお客様の中には東和システムもありましたが、お客様、ダメですよ。こんな会社とつきあったら。こんな会社がかき集めた外注の外注を常駐する客先に連れて行ったりしたら。

 
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