「著作物再販制度」の存続を求める特別決議
日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)は2000年5月31日に公正取引委員会を訪問し、「再販制度の存続についての質問状」を提出した。MICの質問状の趣旨は、「著作物の再販制度が、日本の文化政策として出版・報道・言論の自由と多様性を保障する大切な社会的基盤の役割を果たしてきたと考えるが、もし、再販制が廃止された場合、公取委はそれに代わるべき文化政策上の保障についてどのように考えているのか回答を求める」という根源的な質問であった。
これに対し、公取委は文化政策の見解は現在は白紙であり、わからないという表現をし、これから公取委としての見解をまとめるとした。ヨーロッパ諸国では文化政策上、たとえば書籍の付加価値税が免除されたり、出版社への税金の免除があるのと比べると、日本は経済競争政策・規制緩和の観点しかなく、文化政策上の優遇措置がない。
この間、新聞労連・出版労連・音楽ユニオンはそれぞれ再販制を守る運動を展開してきた。新聞労連は、3月に公取委と新聞協会に要請行動をして、公取委では憲法的視点での新たな議論を求めた。また、再販ビラ二千枚を街頭で配布した。
出版労連は、3月に流通対策協議会と協力して公取委に「再販制度と小規模出版社について」を提出し、再販制度の維持と、取次の流通における取引条件の透明化・明確化を求める要請をした。再販制度が廃止されれば、流通で二大取次の支配力・影響力は現状よりさらに強くなることが予想され、そのことで多様な出版物がを担ってきた中小出版社の取引条件が引き下げられる恐れがあり、結果として多様な出版物の確保ができなくなることを訴えた。
音楽ユニオンは、日本レコード協会と協力して、超党派音楽議員連盟の総会で「特別決議」を行い、公取委に提出した。
2000年1月から6月まで、公取委は新聞・出版・レコードの各業界10名ずつとの勉強会「再販対話」を各六回行なった。この再販対話の内容にについては非公開であり、公開を求めて論点をはっきりさせねばならない。5月31日には公取委はさらに長文の質問状を各業界に送って、8月末の回答を求めた。この質問状も回答も非公開であり、公開して国民的議論をすべきである。6月には公取委のメンバーの課長以上が総入れ替えとなり、その申し送りにこの再販対話と業界の回答内容が、使われるのではないかといわれているが、揚げ足を取られないよう警戒をする必要がある。
公取委は各業界の再販の弾力運用や流通改善を評価しつつも、再販廃止の姿勢は崩してはいない。今後新たな再販制を存続させる運動を押し進めていき、文化政策上の優遇措置を確立すべきである。
以上、決議する。
2000年9月30日
日本マスコミ文化情報労組会議 第39回定期大会