MIC第36回定期総会は、10月25日(土)南大塚・ラパスホールで開かれた。MIC各単産の代表、地方MICの代表など80人が出席した。
総会は岩崎副議長の開会挨拶の後、議長団に篠塚さん(電算労)、井戸さん(民放労連)を選出して議事に入った。北村議長の挨拶、来賓の全大教・高橋書記長、自由法曹団・小部事務局長のご挨拶をいただき、97年度の活動報告と98年度の方針(高橋事務局長)、決算・予算案の提案(白石事務局次長)、会計監査報告(林会計監査)で、午前の議事を終了、昼食休憩に入った。再開の冒頭に、JCJ代表委員の橋本さん、芸団協/PANを代表して江見さんより連帯のご挨拶をいただき、討論を開始した。
討論は、休憩をはさんで争議団の訴えを含めて17人から発言があった。4時過ぎには、活動報告・方針案、決算・予算案を拍手で承認した後、諸決議(別掲)を採択した。役員選考委員会の報告を座長の碓井副議長からうけて、第35期の役員を選出した。新議長に今井一雄さん(出版労連)、新事務局長に葛西建治さん(新聞労連)が就任した。新役員を紹介した後、今井議長が挨拶、総会宣言を拍手で採択した。江草副議長が、今期で役員を降りた方々の紹介と閉会の挨拶を行って、5時前に定期総会を終了した。
なお、総会の前日(10月24日午後)恒例の地方MIC代表者会議が、出版労連の会議室で持たれた。北海道、京都、関西、徳島、広島、北九州、福岡の各地方から9人の代表と幹事4名が参加した。
新聞労連の委員長を降りて職場に戻っている。MICの総会をもって組合の役員はすべて終わるが、役員であろうと職場にいようとその場でできる限りのたたかいをするということでは同じだと考えている。昨日、行政改革委員会に出席して新聞の再販について意見を述べてきた。行革委の委員、消費者団体の代表はすべて再販廃止論者で、理念を語るだけでは勝てない、勝つためには反対論者を味方にするあらゆる努力をしていかねばならない。
本当に勝つためにどうするか、もっと具体的な戦略を立てる時期にきていると思う。そのためには体を働かすこと、勝ちにいくためにあらゆる努力を惜しまない、そういうMICになってほしい、そのことを申し上げて挨拶としたい。
今年6月、大学の教員に任期を付けて採用する「任期制」法案が可決・成立してしまった。
私たちは次の二つを大きな問題として取り組んできた。一つは3年、あるいは5年で国家公務員としての身分が保障されなくなる問題、これは大学の教員だけでなく、公務員全体に波及する問題として反対した。もう一つは、任期制の導入は中長期にわたる学問的研究の否定につながるという問題。ノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士でさえ、5年以上も論文を発表しない時期があった。私たちの運動の不足もあって、新聞やテレビを通して問題点が報道されなかったのは残念だ。学術・芸術・文化に働くものとして今後とも共同して運動を進めていきたい。
東京法律事務所の出身で、今後2年間自由法曹団の事務所に出向となる。10月の初めに大会を開き、三つの重要課題を決めた。@新ガイドラインとのたたかい、A労働法制改悪反対のたたかい、B組織的犯罪対策法・「盗聴法」反対のたたかいである。秋季・年末の最大の課題である。有事立法の問題では全国で網の目の学習会を考えている。新ガイドラインは、安保条約を逸脱しており、憲法違反である。しかも国会の議論なしで決めた。労働法制改悪反対では、連合も全労連も全労協も一致している。「盗聴法」は、組織だけでなく個人も対象となっている。アメリカにはこの法律があって、(7万3千人の対象のうち7万2千人)99%は犯罪と関係のなかった人が対象となった。日本では今も非合法で盗聴をしている、これを合法化しようというもの。北村議長がいわれた身体を動かしてたたかう、MICの皆さんに期待したいと思う。
今年の8月に、ウイーンに行ってリーンハルトウイーン大学教授に「日本の何に関心があるか」ときいたら、「ソーカイヤ」との返事。別の教授も同じ答えだった。総会屋に引っ掻き回され、総会屋と癒着する日本の財界とは何だろう。一言で言えば腐敗が経済界を覆っている。こうした実態に市民はあきれ、あきらめ、投票率だけが下がりつづけている。無関心が国を破滅の道に追いやらぬように、私たちはメディアを駆使して危機的状況を浮き彫りにしていかねばならない。マスコミへの信頼感は低下している。
再販制の問題をはじめ、悪循環を断ちきって日本の前途をになう人に着目し、行動するマスコミをつくるべきだ。21世紀の日本が平和で豊かな民主主義の国になるか、言論が不自由で、アジアで孤立した過労死の国になるか、の分かれ道にたっている。たっているからこそ,MIC・JCJはこれまで同様連帯行動を強め、明るい21世紀をともに切り開いていきたい。
芸団協も参加している芸術文化振興連絡会議(PAN)は、入場税の撤廃をきっかけに作られ、3千団体が加盟している組織だ。入場税撤回はできなかったが、免税点を引き上げさせた。日本の文化政策は、諸外国と比べて助成の面でも制度の面からも極めて不十分だ。
また、今取り組んでいる「市民活動促進法案」(NPO法案)は、今年衆議院で可決されたが、参議院で継続審議となっており、この臨時国会が山場となっている。
新国立劇場における労災、契約問題も取り組んでいくが、当面の問題として財政難を理由に、東京都が文化施設の使用料を2倍に値上げしようとしている問題がある。これがとおれば、厳しい運営をしておる芸術・文化団体に影響を与えるだけでなく、芸術・文化の享受の機会を狭める結果となり、全国的な影響も大きい。12月の都議会に向けての旺盛な署名運動を取り組んでいきたい。市民と労働組合のとの連携を強めるためにもご協力をいただきたい。
本部委員長が選出できず、いろいろと迷惑をかけている。規制緩和・再販撤廃反対の取り組みを2年半やってきて、ここへきて流れが変わってきた。郵政の料金は新聞と同様全国一律だが、民営化の方向がなくなって有利な材料と見ている。労働法制改悪・規制緩和について、連合も反対の方向になってきた。役人のハンコが何にでも必要というような規制は緩和すべきだが、大店法、運輸、金融・保険などむやみな緩和は大変なことになる。
著作物に対する独禁法の適用除外は規制の緩和であり、再販撤廃はむしろ規制である。良質で多様な出版物、新聞を保障するということで再販制が認められ、新聞で110社、出版ではもっと多くの社が残っている。もし再販がなくなれば、関東,近畿でいくつかの新聞社つぶれていくだろう。日本新聞販売協会の人の発言に、再販制がなくなれば競争が更にひどくなるだろうとあった。3か月毎に購読紙を変えればいろいろなものがそろう、それを止めれば新聞は安くなる、という消費者の声はもっともである。正常化していかなければ再販はつぶされる。新聞労連の力量が問われている。
今年2月に解決した大日本印刷争議の長い間の支援に対してお礼を申し上げる。
今、印刷業界では中小企業が生き延びていけるかということで、発言したい。私たちの組合は190社位あって、ほとんどが中小である。そしてDTPを導入したほとんどの企業は採算が取れていない。DTP職場では手作業との並行で作業量が増え、労働時間が延長され残業が増えている。デザイン部門の女性労働者などは、150時間の残業を余儀なくされている。大日本印刷や凸版印刷の2大企業は、デジタル化に向けて更に投資を進めている。今まで印刷に関わらない企業も産業を超えて入ってきている。その中で中小企業が"職"と"食"を守るためにどうすればいいのかー地場産業を守るという課題ーに取り組むこと、これまで独自のたたかいができなかった再販問題にも、本部として行革委に申し入れをするなど取り組みを開始。再販が撤廃されればさらに厳しい経営実態になるということで、これらのたたかいへの参加が全印総連に求められている。
書籍と雑誌の公開ディスカッションで、先生方の発言を聞いて呆れ返っている。出版労連などの意見に関しても、私たちを納得させる意見はなかったといって、あくまで自分の論理に固執している。地方自治体の議会などで再販制撤廃反対の決議が出るなどいくつかの成果は上がっているが、行政改革委員会や公取委に要請行動を続けていて、危機的状況であることを感じている。私たちは日本の国をこれからどうして良くするのかを含めて訴えていきたい。教科書問題はご存知のとおり、価格を上げろという訴え、検定の問題、採択制どの問題などに取り組んできた。週刊新潮、フォーカスに神戸の事件の少年の顔写真が掲載された、私たちも声明を出したが、教科書の問題にしても、これらの問題にしても出版物の質の問題に関わらざるを得なくなってきている。出版労連は今後、産業政策を打ち立てて出版の質の問題を検討していきたい。
CM間引き問題について、議案の補強とその後の取り組みについて発言する。今年の6月にCM間引き問題が発覚した。福岡と北陸放送で表面化したのは2局であった。非常に単純な詐欺行為に見えるが、一方で営業の公正取引の実態に怪しげなところがあり、営業の職場でも議論しづらいところがある。民放労連としてもこの問題を見過ごすわけにいかないので、「再発防止のための提言」を提案して議論をしようとしている。10月10日に緊急営業フォーラムを開いた。そこで営業職場でどういう事が起こっているか、職場から告発できないかの議論がされたが、結果としてそう簡単にできないことがわかった。
広告の取り引きがどんぶり勘定で、契約書を交わしていない。これはCMの放送時間が確定しづらい実態からきている。これを改善する動きにならず、改善することがいいことかどうかわからない、ところで議論がとまってしまう。なぜこのようなCM間引きということが起きたかの背景には、企業の営利第1主義があり、発注してくるCMは全てとるということがある。それに横並びの企業間競争が一層煽り立てるという実態がある。
その後のシンポジウムでは、過剰な発注を儲け主義で受けているということと、広告業界のいびつさがあり、ここの問題を避けてとおれないというのが一つの結論であった。営業担当社個人でなく、組織として対応していくことが必要ではないか。そのためには労働組合の役割が求められるが、組合がどう取り組むかも重要だが、やはり会社としての責任を明確にさせることがより重要である。広告は唯一の収入源ということで、民放労連としても産業基盤の研究、取り組みが必要。
営業フォーラムを通じて広告労協の協力を頂きながら引き続きこの問題を追求していきたい。
労災事件で一番多いのが過労死で、山川事件は逆転認定された。運動でがんばったのだが、山川労災の支援をしていただいたお礼を言いたい。
労基法第9条に労働者の定義があるが、映画のスタッフ、俳優、芸能実演家はあてはまらない。芸能労災連をつくって、安全問題・事故の補償に取り組んでいるが、瀬川、佐谷二つの事件がある。2件とも三審目の労災保険審査会で再審中だが、瀬川労災が焦点で先に決定が出る。今署名を集めているが、全建総連が全面的に取り組んでくれることになった。10月10日に新国立劇場がオ−プンしたが、すでに東宝舞台からの出向者が怪我をした。コンピュータが進み、事故が増えるのではと心配している。映画はこの夏、話題を呼んだが、秋に入ってからはガラガラ。労基法も守れない状態で作ってもよい映画はできない。
日本の映画を支援する制度確立のために、労働組合と職能団体で日本映画振興基金の共同の案を作った。支援をお願いしたい。最後に、われわれの運動をサポートしてくれる人を、ということで中労委委員に民放労連の磯崎さんを送り出したい。
緊急に三つの提案をして、議案の補強としたい。CDを含め著作物の再販撤廃の運動の一環として、11月17日の日比谷公会堂での総決起集会を成功させたい。労資あげての取り組みは大変重要で、政府・政党代表者も党首クラスのご出席を固めてきており、この集会がこけると大変です。その影響は計り知れないものがあり、ぜひ大勢参加のほどを。
二つ目は、東京都の文化施設使用料の値上げ問題です。芸術文化振興連絡会議は100万署名を始めました。東京都がすべてのものに都民の「受益者負担」をさせるねらいです。これを許すと、地方にも大影響があります。署名にぜひご協力ください。
三っつめは、NPO法案の件です。与党三党、民社党修正案が、参議院で11月17日から審議されます。しかし、共産党、新進党も対案を用意しており、与党案より優れています。そこで福岡(11/10)、大阪(11/17)、札幌(11/21)に、市民団体による市民公聴会を準備中です。ナショナルセンターの連合も「市民ボランティア局」を新設して、ネットワーク作りをしようとしています。こちらのご協力もよろしく。
まず最初に、名古屋の東宝ダンスホール争議が昨年12月に和解で解決しました。MICの皆さんの支援に感謝します。議案書には、97春闘の成果が3.42%と高い伸びなっていますが、これはオーケストラに所属している方の平均(約1500人)で、その他に4000人を超えるフリーの人たちがいて、その多くは年収300〜400万の低賃金というのが実態です。
最近は技術革新も進み"電子音楽"が広く浸透している一方で、生の音楽に接する機会が少なくなっているのではないでしょうか。音楽ユニオンでは11月18日に、武蔵野市で「見本市コンサート」を開くが、こういったことをきっかけにぜひ生の音楽を見直してほしい。イベントなどで必要なときは音楽ユニオンにぜひご連絡ください。
CM間引き問題について、広告業界に立場から発言します。「企業の利益優先」が原因という発言がありましたが、広告の取引は複雑なものがあります。現場の担当がこの種の問題を話したがらない実態は、民放だけでなく広告も同じでした。なぜ話したがらないか。これは広告取引が一般の商品取引と異なることが原因です。広告の媒体料は、スポンサーにとっては「媒体社が提示する金額」と「広告会社が提示する金額」は同じです.例えば雑誌広告1ページ100万円で出したとして、広告会社の取り分は場合によって異なることがあります。広告会社と媒体社との力関係によって決定されるわけです。さらに、これにスポンサーが絡むことになります。ともかく、広告会社の手数料は形の上では媒体社から出ることになります。しかし実態は、広告会社はスポンサーのエージェンシーとして媒体社に接しています。「広告会社は誰のエージェンシーか」が今後の広告業界のポイントではないか、と考えています。民放に限らず、新聞や雑誌でも広告取引は発生しているわけですから、MICとしてこの「広告取引」について取り組んでいただければ、と思います。
教科書攻撃は、平和や憲法に関わる大きな問題で、出版労連でも教科書共闘会議を作ってたたかっている。藤岡氏(東大教授)らの「自由主義史観研究会」は、「新しい教科書を作る会」を12月に旗揚げする。それは2000年の中学の歴史教科書を彼らの手で作る、その新教科書では日本の神話を取り上げるべきだ、というものだ。その背後には、4月21日の読売新聞1面「地球を読む」での中曽根元首相の文「憲法と教育基本法を変えるべき、それが日本を駄目にする」という国家主義勢力が控えていた。狙いは憲法改悪だ。
出版労連の教科書対策部に対して、某右翼より脅迫状が送り付けられた。教科書の著者の玄関先に送り付けて「居所は分かっているぞ」というものだ。また、街頭宣伝車を出して、「神戸事件の犯人を生み出したのは、戦後民主教育だ。おまえの問題だ」と恫喝をしている。国家主義者、右翼タカ派マスコミジャーナリズムの攻撃だ。出版労連も「教科書に真実と自由を連絡会」に結集してたたかっている。教育労働者との共同行動も広げていきたい。地方議会の動きにも警戒しなければならない。長崎では従軍慰安婦問題削除の請願があったが、うまくいかなかった。しかし、検定強化の請願が採択されて、その動きは新潟、千葉の各地に広がっている。
新聞労連では2月の臨時大会で、「新聞人の良心宣言」を採択した。その内容は、ジャーナリズムの危機に対して、国民とともに自助努力を確認したものである。その後ジャーナリストや市民の協力で、マスコミのあり方批判を掲載した小冊子を発行した。
「新聞人の良心宣言」の10項目を手帳版にしたので、かく単産での普及をお願いしたい。今年度は、MICとしての「倫理綱領」の提起をお願いしたい。
中労委の第25期の労働者委員としての活動をしていますので、その報告をします。昨年第24期の任命に際し、純中立労組懇談会と全労連の共同候補となりましたが、不当にも連合独占任命となり、私は任命されませんでした。25期の任命は、98年10月です。
25期の任命をめぐる情勢は、次の通りです。
@97年5月15日に出された、(21期〜23期の「損害賠償請求事件」に対する)東京地裁の判決では連合独占を見直し、労働委員会制度の原点に立ち戻って「公正な任命」を行え、との裁判所の判断が出されました。この判決を活用して、大宣伝をする運動ができれば、私が任命される条件が切り開かれます。
A5.15判決の影響もあってか、連合サイドでも「連合独占」の見直しをしようとする動きも出ています。
B97年11月1日改選期を目前にして、東京都労働委員会の労働者委員の枠の割り当てについても見直し・修正の動きが出ています。
MIC各単産の支援を得て98年10月に向けて、候補者活動を続けていきたい。強力な支援と着実な取り組みがあれば、25期には必ず実現できるものと確信しています。
関西MICの活動報告の特徴点について報告したい。97春闘では、はじめて大阪春闘共闘委員会に加盟したことで、地域での共闘が一歩進みました。集会や統一行動、特に3月19日の"大阪一万人総行動"を昼に、夜は関西MICと音楽ユニオンの共催で「春を呼ぶコンサート」を250名の参加で開きました。
一番力を入れたの活動は再販制存続の活動です。今までは3単産(新聞、出版、音楽)でやっていましたが、関西MICの活動としては今年が始めてで、10月17日に、大阪府議会での再販制度維持の意見書採択にこぎつけました。
マルチメディアの時代になってきているということで、今年からお互いに情報交換を始めました。また、歌う忘年会は6回になりますが、その夏版をやることにしました。原水爆禁止平和大会の前に、若い人に学んでもらおうということで「ピースキャンプ」を実施しました。映演共闘からは映画を2本、バンドも4組参加、そして岳南朝日労組(新聞労連)の片岡さん一家も参加してくれました。来年からは定着させたい。今後とも京都MICと連携しながら、大阪の地でがんばっていきたい。
MICのホームページの宣伝と電算労でおこなっているパソコン教室について発言したい。ホームページは労働組合として、外に対してMICの存在を知ってもらうことができ、宣伝効果も大きい。さらに組織拡大に活用することができる。一方内部に対しても、組合員にMICの存在と活動内容を知ってもらえるし、各種データベースとしても活用できる。MICの声明文、イベント、本日の総会の記事もホームページに掲載されるので、多くの人に知ってもらえる。大いに活用してもらうためにも情報の提供をぜひお願いしたい。
電算労のパソコン教室だが、組合員の中で新しい技術についていけない、という人が増えている。96年の春闘時のアンケートでは、4分の1が、今年のアンケートでは更に増えて3分の1が、ついていけないと訴えている。こういう深刻な問題があり、労働組合としても放置できないと、企業に技術教育を要求しているが、中小のところではなかなか難しい。そこで組合としても独自に教室を開催したのだが、(外へも開放してい折るので)MICの皆さんにも大いなる利用をお願いしたい。
組織問題と会費の問題で発言する。前期、フジテレビが移転のため抜けて、出版と印刷の西部マスコミになった。規約の問題もあるが、新宿、渋谷地区では活発に活動している組合もあるので広く参加を呼びかけていきたい。
もう一つの金の問題だが、現状は年間予算が60〜70万円で、3分の2が単産からの分担金金となっていて、不足を補うために海苔の物品販売を行っている。できれば100万くらいの活動費が欲しいが、他の地方マスコミがどうやっているか、状況を聞きたい。
最近気にかかっていることを申し上げて、挨拶とさせていただきます。 一つは、教科書攻撃に関してです。教育と教科書は誰もが一度は関わるものですが、その割にはなかなか全体の関心にはなりません。そのこととも多少関係するかと存じますが、例の藤岡東大教授が中心になって気炎を上げている「自虐史観」の克服問題です。「教科書が教えない歴史」という本が4点で100万部売れているそうです。また地方議会で、教科書から慰安婦の記述を削除せよ、検定を強化せよという決議があがっています。「自由主義史観研究会」の目的は、憲法の改正だそうですが、困ったものです。 そこで、私が関心を持っているのは、この教科書攻撃を支えている人たちのことです。一部の狂信的な学者や政治家だけがこれを支えているのなら、それはそれでわかりやすい。しかし100万の読者がいる、現状に飽き足りない父母や教師もいるでしょう。こうした人たちの思想を、姜尚中東大助教授は「草の根ナショナリズム」と呼んでいます。上からの戦後民主主義では癒せなかった心情的ナショナリズムの、厚い岩盤、広いネットワークが歴然としてある。憲法の安楽死をねらう勢力に私たちはど
う対処するのか、もちろんこれまでも対抗してきましたが、しきれていません。私は大きな問題だと思っています。 二つは、MICの方針にもありますが、今「ガイドライン」が問題になっています。そのものと手続きが問題ですが、私たちの側に議論が盛り上がらないことも問題になっています。行革規制緩和、「新時代の日本的経営システム」、憲法の見直しと、あらゆる側面から「敵」は私たちに攻撃を仕掛けてきています。加えて「ガイドライン」の見直しです。反撃の体制もない、力もない。やられっぱなしになっているのが実態です。なぜこんなに私たちはおとなしくなってしまったのか。作家の島田雅彦は「与党の大勝利でしょう。日米安保の存在を国民の暗黙の了解、無意識の了解事項にしてしまったわけですから」といっています。 私たちは何はともあれ、安穏な暮らしに絶対的な価値を置いてきたのではないか。外に目をむける苦労を避けて、内へ内へとこもってきたのではないか。言葉と感性を共有できる仲間内という共同体に身を埋めてきたのではないか。労働組合も例外ではないのではないか。そういう状況に私は関心を持っています。こうした観点から私たちの「仕事と生活」を
見ていくと、ごく普通の市民の意識、社会の意識が方向を見失ったまま、混迷・流動しているように見えてなりません。そこで、大袈裟に言えば、私たちMICのマスコミ・文化・情報という職業を通して実態を解明し、指針を提起できないかと、そんなことを考えております。言葉足らずですが、以上をもって就任の挨拶とします。
「カッ。カッ。カッ」
悪夢としかいいようのない軍靴の足音が、加速度的なスピードを伴って日本中を覆い始めている。戦後、半世紀以上が過ぎ二一世紀を目前に控えた今日、「いつか来た道」に逆戻りしていくような危機的な状況が生まれつつある。私たちマスコミ産業で働く者たちの英知と行動力が試されている時ともいえよう。今こそ、私たちの総力を結集して平和と民主主義を確立する闘いを強化しない限り、この時代の閉塞状況を打破する道は開けない。
沖縄の米軍用地を使用期限切れの後も「合法的」に使えるようにする駐留軍用地特別措置法(特措法)が今年四月、議員の圧倒的多数の賛成で原案通り成立した。安保条約は国の安全保障の根幹であり、法的空白はつくれないと憲法よりも安保を優先した結果といえるだろう。衆議院の特別委員会の野中広務委員長(自民党幹事長代理)でさえ「大政翼賛会的にならないように、若いみなさんにお願いしたい」と訴えるほどだった。
日米両政府は、日米軍事同盟を強化し「自動参戦条約」ともいえる新しい「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」を策定した。憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に抵触する項目を含んでいるにもかかわらず、国会承認さえ得ようとしない政府の姿勢は民主主義を踏みにじるものとしかいいようがない。到底容認できない。
また今国会に提案が予定されている「組織的犯罪対策法」は、憲法で保障されている通信の秘密やプライバシーの侵害が公然と行われる危険極まりない法律だ。この中に含まれている盗聴が制度化されれば、労働組合の活動までその対象になりかねない。もともと日本は盗聴を認めてこなかった。これは戦前・戦中に置ける捜査当局による深刻な基本的人権の侵害に対する反省に立つ賢明な判断が働いていたからだ。
時代の振り子は大きく右に揺れ出してきた。旧日本軍の従軍慰安婦をめぐり、日本の責任を否定する動きが続いている。一部の学者や国会議員、新聞などは、中学校の歴史教科書から関連記述を削除するように求めている。私たちマスコミ産業で働くものは、このような右からの「突風」に対しては、常に報道の自由と民主主義を守る立場から立ち上がるべきだ。八月には教科書検定によって不本意な記述をしいられたとして、家永三郎・東京教育大名誉教授が国に損害賠償を求めた「第三次家永教科書訴訟」で、最高裁は新たに「七三一部隊」の記述を削除するよう求めた処分を違憲とする判決を言い渡した。家永さんが訴えてきた「教科書検定は違憲」という主張は、今回の最高裁判決によって否定されたが、訴訟は歴史の暗部を覆い隠そうとした密室に置ける恣意的な検定の実体を浮かび上がらせた。この訴訟が提起した学問・教育の自由、歴史の認識、民主主義の前進といった課題は私たちの今とこれからの課題でもある。
行政改革ではなりふり構わず「省益」を守るためだけに暗躍する族議員と官僚、総会屋との癒着を続ける金融界など、歪んだ「この国の形」に市民はあきれ果て、疲れきっている。私たちにいま求められ、実現しなくてはならないことは「共生」の世の中である。そして弱者の視点に立った「いやし」の哲学だ。
今、世界中で報道倫理が問われている。英国の元皇太子妃の交通事故死により、欧米では報道の自由を法的に規制する動きが急激に高まっている。この波は間違いなく日本にも押し寄せてくるだろう。国家権力にマスコミをしばる法律を作らせてはならない。報道被害を繰り返し起こしている報道機関に対し、市民の目は厳しい。当然の批判と受け止めよう。このような中で、神戸の児童殺傷事件では、またしても報道機関が犯人探しに血道を上げ、誤報の嵐を巻き起こしてしまった。そして、こともあろうか週刊誌の中には、被疑者の少年の顔写真を掲載し、マスコミの信頼を失墜させてしまった社さえ出てしまった。現行の少年法の問題点とは別の次元の問題だ。マスコミが被疑者の顔写真を掲載して、少年をさばく権利はないはずである。
放送では、NHKと民放が協力して番組による権利侵害の苦情に対する「放送と人権等権利に関する委員会」を設立。新聞労連も日本型の「報道評議会」の設立を模索している。ジャーナリズムの復権・再生は、市民の立場に立てるかどうかにかかっている。権力に一定の距離をおくことを忘れてはならない。皇室に対しても冷静な目を向けるべきだ。昭和天皇の死去での過剰報道を真摯に反省し、皇太后の時に備え今から報道体制をチェックすべきだ。
私たちは、著作物再販制度が新聞、書籍、レコードの製作と流通を保障し、そのことによって多様な言論・報道の自由や文化・学術・芸術の普及と発展に寄与していると考えている。その再販制度の存在が重大な局面を迎えている。私たちはこの三年間、公正取引委員会、政府行政改革委員会など規制緩和の名の下に再販制度を撤廃しようとする勢力と真正面から対決してきた。しかし、再販を撤廃しようとする動きは依然として一部に根強くある。十二月初旬に行革委が最終報告をまとめ、公取委も年内には規制研でのとりまとめを行い、来年三月いっぱいまでに公取委としての結論を出す方向性を崩していない。この流れを押し戻し、再販制度存続をかちとるためには、これまで以上の世論構築が必要だ。
また産業界全体の問題でいえば、テクノストレスと思われる原因での自殺者が多数出ている現状を放置してはならない。仲間の命を守れないような労働組合では、その存在意義がない。マスコミ産業で働く一人ひとりの意見に耳を傾け、スランプの仲間にはそっと手を差し伸べられる人間がいる組織でありたい。私たちは「民」より「企業」という発想に陥っていないか、自分自身を見つめる必要がある。日経連の打ち出した新時代の日本的経営に対し、全体としての闘いを構築すべきだ。また「企業のために」の名のもとにリストラ・合理化がまかり通り、中高年労働者がその犠牲になる現状を打破していかなくてはならない。今こそ、企業主義や個人主義に埋没することなく、時代の閉塞状況を跳ね返すようダイナミックな闘争に強固な連帯をもって挑もう。
一九九七年十月二十五日 日本マスコミ文化情報労組会議第三十六回定期総会