2016年3月3日
日本マスコミ文化情報労組会議
議長 新崎 盛吾
高市早苗総務大臣が、政治的公平に違反したと政府が判断した放送局について電波停止命令を出すことができる、と国会で答弁を繰り返していることに対し、私たちマスコミの現場で働く労働者は強く抗議し、その撤回を求める。
放送の政治的公平などを定めた放送法第4条の「番組編集準則」は放送局が自律的に守るべき倫理規定と解釈するのが通説であり、「番組編集準則違反に対して電波法の無線局の運用停止や放送法の業務停止などの行政処分を行うことは表現の自由を保障する憲法上許されない」とするのが大半の憲法・言論法学者の意見だ。この条文はむしろ、政府などの圧力によって放送の政治的公平性が失われることのないよう、権力者を戒める規定と解釈すべきだ。「停波命令に憲法上の問題はない」という高市総務大臣の答弁には何らの正当性も認められず、番組内容を理由とした放送局への不利益処分は明らかな憲法違反と言える。
また、高市総務大臣は「一方の政治的見解だけを繰り返し放送した場合」など極めて稀な場合にしか適用しないと言うが、それならば、政府広報番組や自衛隊員募集のCM、原発の安全性ばかりを強調する番組などのほうこそ、政治的公平を疑わせる番組としてもっと問題視されるべきだ。一連の国会答弁は、政府・与党を批判する番組、権力者にとって都合の悪い番組を放送させないように放送局に対して露骨な圧力をかけるもので、このような言論弾圧は絶対に許されない。2月末にテレビキャスター有志が「私たちは怒っている」とするアピールを公表して一連の総務大臣発言を厳しく批判していたが、その怒りは現場で働く私たちも共有しているものだ。
自民党政権は番組内容を理由とした放送局への行政指導を繰り返しているが、こうした行政指導が放送局に多大な萎縮効果をもたらしてしまうのは、政府による放送の直接免許制に原因がある。先進国では極めて異例であるこの制度について、高市総務大臣は見直す必要はない、と断言しているが、政府による放送への不当な介入が繰り返される現状を見れば、その弊害はもはや明らかだ。諸外国で通例となっており、過去に日本でも採用していた独立行政委員会制度に基づく放送行政について、今こそ真剣に再検討すべきだ。
以 上